海外在住者にとって情報発信は最強のセーフティネットだという話

8年前にはじめたブログにいまも飯を食わせてもらっている

以前こんな記事を書きました。

内容はタイトルまんまなのですが、もう少し詳しく書くと、

まとめると!海外経験者の帰国就職が難航する理由は…

  • オンライン面接という壁に阻まれ
  • 多くのリクルーターが消極的になりがちで
  • 日本の企業は扱いやすい組織人を求めており
  • 海外経験というキャリアは日本社会でブランク扱いされがち

ということです。

そんな話。

じゃあどうすれば?ということも私なりの考えを書いていきたいと思っていて、そのひとつとしてインタビューを通じて見聞きした、いろんなキャリアの実例を紹介する…前に、まずは私自身の話をしたいと思います

ベトナムに住み、ブログ(「べとまる」といいます)をはじめた8年前から、実質的にはずっとフリーランスでやっています。ネットコメディアン的なこともしているためか、「どうやって食べてるの?」と聞かれることも多いのですが、ふつうに、ライター、編集者、リサーチ、コンサルティング、とかです。

ただこれは全体の半分くらいで、常にもう半分は、「自分が楽しめそうだから」「誰かの役に立ちそうだから」という動機で、稼ぎになるかどうかも分からないことをやっています。このSalmonSというサイトもそのひとつ。とはいえ、ちゃんと稼がないと続けられず本末転倒なので、それは以前より意識するようにしています。

ベトナムでドリアンの皮を身にまとう私をそれを笑顔で囲む地元の人たち
「ネットコメディアン的なこと」の一例、ドリアンの皮を被ってベトナムの街を歩いた(記事)。

そんな自分の働き方についてなぜ書こうと思ったかというと、海外経験をどう生かして就職するかという文脈で人と話しているとき、「独立できるならしてる」という声が意外と多いんですよね。やりたいことがあるとかないとか、そういう事情もありますが、身も蓋もない話をすれば確かに、独立できるだけの力があれば帰国後の就職うんぬんで悩まなくて済むんですよ

だから私は、社会に対して変わってほしいと思いつつ(冒頭の記事はそんな内容です)、帰国就職に悩んでいる人たちに対しては、悩むくらいならしなくていいよね、つまり、独立すればいいよね、とも思っています。勝手な言い分だと思っていますが、それでもマイペースに生きられることが一番だとも思っているのです。

そこで、私の話に戻って。自分でもなんでだろうなと思うくらい、会社からのお給料という固定収入なしに曲がりなりにも生きていけているのですが、最近ようやくその謎が解けました。私の場合、定期的にクライアントが現れていて、その方々はもれなく全員、私がベトナムで書いていたブログを読んでくれていた読者なんです。

当時流行りはじめたアフィリエイトとか、そういった時流には乗れなかったし、たぶん性格的にも自分にはできなかったと思うけど。でも、バカバカしいことをたくさんやったり自分の考えを書き連ねてきたお陰で、いろんな方々が私のことを覚えてくれていて、仕事をいただけるので、「いまだに私はブログにメシを食わせてもらっている」と言えます。広告収入で、ではなく、そうじゃない形で、ということが重要です。

試みてないし、いまはそのつもりもないけれど、これは転職活動でも生かせる気がする。いやまぁ、会社勤めできないのはバレてるかな。これは言いすぎた。で、「仕事をもらう」とか「就職する」とかばかりでなく、「仕事をつくる」という行動にもつながるはずです。これはあとで詳しく。

その実体験を踏まえて私は、海外在住者にとって情報発信は最強のセーフティネットだ!と言いたいのです。

どういうことか、具体的に書いていきます。

情報発信をすれば、海外経験がブラックボックス化しない。

海外経験者はなぜ日本の転職市場で疎まれるのか」で、「海外経験というキャリアは日本社会でブランク扱いされがち」と書きました。これは企業の人事やリクルーターといった転職市場でのプレイヤーたちが、その国に行ったことがなければ、ましてや海外で働いたことがなければ想像ができないから。という持論です。

理屈で分かっていても、想像できなければ感覚上はブランクと同じ。あなたがどんな素晴らしい人物でも、「分からない」は相手にとってリスク。海外は旅行のイメージも強いので、そこに引っ張られることもあるのかも。

そんな社会に変わってほしいと思っていますが、だからといって全員どこかの国に行ってもらう訳にもいかないので、こちらから伝える姿勢も必要です。でも、生まれてから赤色を見たことのない人に赤色は説明できないですよね。分かりづらさ(分かりやすさ)という点では、国家資格や学歴の対極にあるものだと思っています。

話が上手かったり、達人的なプレゼン資料がつくれたりするなら別ですが、手っ取り早いのは海外現地にいるうちからコツコツと情報発信しておくということです。第三者に見せられるようにしておくということなので、あくまでブラックボックス化させないという目的においては、ミニブログの集合体であるSNSよりは、あとから整理しやすく情報を盛り込みやすいブログや動画を優先した方がいいかも(すんごい数のフォロワー数なら関心は引けるだろうけど)。手っ取り早いと言いつつも、簡単なことだとは言いませんけどね。

個人的には、このひとつで帰国就職の難易度はガッ!と低くなるんじゃないかと思います。海外経験という相手にとって未知のものを、ブログや動画といった社会での市民権が得られはじめた既知のフォーマットに当てはめられるから、俄然わかりやすく、俄然第三者(人事担当や社内の上長)にも説明しやすくなります。

どのみち候補者のことをネットで調べるのはいまや当たり前なので、それが第三者向けに書かれたプロ意識を感じられるものなら、よほど会社が求める人材像とミスマッチしていない限りはそれだけでひとつは勝てるはず。

このことは就職のみならず、独立して仕事をとっていくことでも同じで、たとえば何年も前に書いた記事がふとしたきっかけで新たなクライアントを呼び込むこともあります。今更感のある話ですが、ネットコンテンツの強みって、過去書いた記事という自分の分身が、常にインターネット上で営業に回ってくれていることなんですよね。SEOを頑張ったりとちゃんとケアをしないといけない、とかはあるけど。

ちなみに、可能なら顔は出した方がいいです(自信があるかどうかに限らず)。なぜなら、オンライン(ネットコンテンツ)で顔を出していれば、オフラインで会ったときに「あの人だ!」というタレント感がある…みたいだから。逆にオフラインでの出会いが先でも、オンラインで出てると「あの人だ!」となると思います。それだけインパクトがあることなんですよ、自分のPCやスマホにSNS以外で顔が出てくるってことは。

整理すると、海外での情報発信は、あなたの経験をブラックボックスにさせない最高の経歴書です。

情報発信をすれば、海外にいるからこそ新たな出会いがある。

キャリア上のブランクとも似ていますが、たとえば帰国就職の難しさには、「人間関係が断絶してしまったので頼れる人が少ない」という理由もあると思います。海外に出ると、日本での知人と友人に、物理的に距離が生まれることはもちろん、どうしても心理的な距離が生まれる。

私自身、ベトナム移住後は(日本に住む)知人や友人たちとの付き合いは人によってハッキリと別れたと感じます。すでにSNSでつながれる時代だった分、激減しなかった気もしますが、このあたり、(転職であれば)会社という組織でつながる同僚や、子育てが共通の話題の中心だったママ友なんかは顕著じゃないでしょうか。

人によっては笑っちゃうくらい疎遠になりますからね。移住前にある知人から「ベトナムに行く意味が分からない、もう会うことはないと思うけど」と言われて、なんだそりゃって思ったことがありました。つまり、人によっては、物理的な距離と心理的な距離が比例することがあるんだと。というより、テリトリー内にいるかどうかなのかもしれないですね。学校でもグループが違えば友達じゃない、みたいなことだってある訳だし。

でも、住む場所が変わるということは、新しい出会いもあるということです。いまや多くの国に日本人コミュニティがあるので現地の言語ができなくとも日本人の友人はつくりやすい。「そんなこと分かってるよ!」と言われそうですが、実は言いたいのはそこじゃない。インターネットでも出会えますよ、ということ。

私を例に挙げると、ベトナムという国に対して、ビジネスや、観光や、あるいは自身にルーツがあるといったさまざまな形で、興味を抱く方がいる訳ですね。そういった人達がネットでベトナム情報を集める中で私のブログにも辿り着き、行く!というタイミングで連絡をもらえることが多々ありました。いや、めちゃんこしょっちゅうありました。これは、ブログをやっていなければ、絶対に絶対に起こり得ない出会いだったと思うんです。

もちろんこれは現地在住者もそう。同じ街に住む日本人であれば遅かれ早かれ出会っていたかもしれませんが、向こうはブログを通じてこちらを知った上で連絡をとってくれているので、会う前から気が合う可能性は高い。逆に私が期待に応えられないこともあったかもしれませんが(苦笑)…それもまた勉強になるということで。

また、ネットという誰もがアクセスできる場所でのことなので、交友関係がどえらい広くなります。現地在住者(日本人)だと、業界や年代、また現地採用か駐在員かなどの属性によってコミュニティが別れていることも珍しくない。だけど、娯楽系コンテンツの見る人ってそういう壁を越えて嗜好が同じなので、いろんな出会いを通じていろんな視点を持てます。これは狙ってもできない、その点で向こうから来てもらえるのはありがたい。

もちろんすべてがポジティブな出会いでもないのですが、そんなのは1%あるかないか。現地在住の日本人も、外国人も、ベトナム人も、出張や観光のついでに会ってくれた日本人も、お互いに「気が合うな」と感じた人とはそれからも縁がつづく。私はベトナム生活をはじめてから、帰国中に回るなどして行ったことのある日本の都道府県がざっと5倍に増えているのですが、ほぼすべてベトナムでの情報発信をきっかけに出会った友人を訪ねて。直接でなくとも、そのきっかけを辿るとやっぱりそれは同じです。

「それがどうキャリアに関係するの?」というと、単純に、自分を知ってくれている人達がさまざまな分野や場所にいるってすごくありがたいことですよ。仕事にしたって、情報にしたって、何かあれば思い出して連絡をくれる。もちろんそれが目的で情報発信をしていた訳じゃないし、ベトナムうんぬん関係なく、人物として好きだから関係を続けたい訳だけど、結果的にはセーフティネットになっています。もちろん、時には自分もその人のセーフティネットになる姿勢が大前提だと思いますけど。友達ってそういうもんですよね。

言い換えるなら、海外での情報発信は、現地在住者のみならず、ネット上で仲間を増やす大チャンスなんです。

情報発信をすれば、インプットとアウトプットで技術が身に付く。

情報発信の形にもよりますが、私の場合はそれこそレポート記事が中心のブログやライティングだったので、何か気になる話や流行をキャッチしたらすぐに行って確かめるようにしていました。前段で人間関係について書きましたが、取材相手がそのまま友人になった例も多いです。とくに、ベトナム人の方がそうかな。

アウトプットする先があって、ましてやその向こうに期待してくれてる人がいるというのは、それが事実でも妄想でも、インプットを頑張る動機になります。しかし、一方で「ネタにならないなら気が乗らない」というデメリットも…と思いましたが、よく考えると私ってもともとは出不精な性格なのでした。関係なかったわ。

外国というただでさえ未知の環境にいるんだから、動けば動くほどスポンジのように知見を吸収できるじゃないですか。それを意識しても気持ちだけじゃ行動に限界があると思うんですよね。そういうときに、「待ってる人がいる」というのはかなり支えになる、そして得た知見や広まった見聞は一生涯に渡ってあなたのものです。

以前から私は、編集として関わったライターの方々も踏まえ、「ライターって必要な能力が多いよな」って思っているんですよ。スタイルにもよるかもしれないけど、ネタを考える発想力、記事を組み立てる構成力、アンテナを張りつづける情報収集力、ときには身体を張る行動力、取材や執筆の予定を組み立てるアレンジ力、写真の撮影スキル、とか。文章力もか。一番ライターっぽいものが抜けてた。

いまやライター人口が多すぎて、その肩書きには価値が薄いというか、何だったらかえって足を引っ張ることすらあると思うのですが、いま書いたような能力は分解して使いまわしが利くし、何だったらそっちの方が報酬が高かったりする訳です。これは結局、その成果物によりクライアントがどのように稼ぐかだと思いますが。

ブログをやってきたと言いながら、もはやライターの話になっていますが、技術を磨きたいのなら原稿料をもらえるライターを目指した方がいいと思います。できればその国や海外の話がメインテーマでないメディアで。なぜなら、興味のない読者を振り向かせるのは難しいから。凹むことも多いけど、勉強になります。

ちょっと話が逸れちゃったけど、海外での情報発信(もっと言えば記事や動画などボリュームのあるコンテンツ制作)は、インプットとアウトプットの両方で、いろんな技術が身に付く大チャンスなんです。

ワンチャン、情報発信だけで食っていけるかも。

いろいろと書きましたが、ここまでは就職や独立後の営業に役立つよという文脈でした。しかし、これが目的ではじめる人もいるかもしれませんが、その情報発信そのものがあなたの一生を支えてくれるかも…しれません

一部YouTuberのサクセスストーリーは、聞いたことのない人の方が少ないんじゃないでしょうか。最近は芸能人が入ってくることで一般人は活躍できなくなってきているなんていう話も聞きますが、だからこそ海外での日本語情報発信はまだまだブルーオーシャンです。ただの生活情報でも価値があります、ま~ただの日記を漫然と書いてるだけで読まれた時代はもう過ぎたと思うけど…場所にもよるのか。またはめちゃ文才があるとか。

幸い日本人のことを友好的に見てくれる国がまだあるので、親日国で日本人であることをフルに生かして現地の人達に向けたブランディングもありだと思います。計算があったかは聞いてないけど、友人はそんな感じです。

ライターの方が、身に付けられる技術を使って法人向けに仕事はしやすいかもしれませんが、インターネットユーザーの時間が記事から動画に吸い取られていっているいま、というより海外というヴィジュアルでぶん殴れるコンテンツの特性を考えても、単体でのサクセスを狙うなら動画の方がいいでしょう。私自身はもともとブログからはじまった人間なので寂しくもありますが、それも時代です。大事なのは何にやる気が出るか、だけど。

海外在住者にとって情報発信がセーフティネットである理由

改めて整理すると、海外在住者にとって情報発信がセーフティネットになる理由は、

  • ブラックボックス化する経験をネット上に見える形で残せて、
  • ネット越しでその国に興味のある人達との出会いがあって、
  • インプットとアウトプットともに技術が身に付いて、
  • ワンチャン、情報発信だけで食っていける。

ということです。

いいことしかないですね。これだとなんか嘘っぽいので、いやなことも書いておくと、ネット上で絡まれたり叩かれたり、あることないこと書かれますよ。シッカリと。日本人社会でこれやられるときついです。人間不信にもなります。でもいまは私がブログを頑張っていた時代(2012~2017年あたり)と違って、情報発信は市民権を得ていますから、メリットの方が余りある。それに、叩かれるのも人生においてはひとつの糧…かも。

ここからは蛇足で言いたいことを…

仕事、出会い、技術習得、コンテンツドリーム。

そんな話でしたが、いっっっっちばん!大切だと感じているのは、情報発信を経ていまの私がいるということです。言ってみれば、あなたがここまで読んでくれているこの記事(ありがとうございます)、そしてこのサイト「SalmonS」。私がベトナムでブログをはじめなければ、課題と出会うこともなく、確実に存在していません。

私が取り組んでいることはほかにもあって、執筆や編集はもちろん、外国人労働支援とか、地方創生関連とか、いろいろあるんですけど、それらも同じ。最初の方に書いた「仕事をつくる」というのはこの話。そういうことを思い至った思考、物事を進められている状況を自分で気に入っています。すべてのはじまりはブログだった。

セーフティネットだのなんだのとタイトルに掲げておいてなんですが、それは結果論であり、副産物みたいなもの。「だいたい人生が開けるし、海外というボーナスステージにいるうちにやっとこう」ということです。

書きたいことがない、言いたいことがない。という話もありますが、「便利な日本を飛び出して海外まで行っといてない訳ないでしょ」と思ってます。行かされたなら別だけど。あなたの中の神龍(シェンロン)を呼び出してみてください。いまの時代、それを叶える手段として情報発信が使える可能性は大いに高いはずです。

参考になるか分かりませんが、私にとってのモチベーションはたぶん怒りです。青くさい話ですが、ブログをはじめるときは「俺はもっとおもしろいはずだろ!?」と自分に怒っていたし、このサイトをはじめるときは「海外経験者は日本にとって必要なはずだろ!?」と怒ってました(というか後者はいまも怒ってる)。

報われたい、報われてほしい、そんな自分や社会に対する怒りをどう加工してどう世に出すか。この理屈が、ほかの人にとってどれほど当てはまるか分かりませんが、私はずっとそんな感じです。

やりましょう!海外で情報発信。文章、音声、動画、漫画にイラスト、いろいろある。

こんな長文を最後まで読むほど興味があるなら、やるでしょ?私なんぞでよければ、何かあったら聞いてね。

ちなみにベトナムでブログをはじめる前後については、下記に詳しく書いてあるのでお時間あったら…長いので本当にお時間があったら、お読みください。

6年3ヶ月のベトナム生活であったことすべて書く


海外経験者のキャリアを考える

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2020-07-14|
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