島からつながるエコヴィレッジ|オーストラリア+タイ+マレーシア|金城真幸

インタビュイー
  • 名前: 金城真幸さん
  • 仕事: 沖永良部島(おきのえらぶじま)地域おこし協力隊→起業準備中
  • 海外在住歴: オーストラリア10年/タイ6年/マレーシア3年(1994年4月~2013年4月)
金城真幸さんのインタビュー画面

奄美群島のひとつ、沖永良部島。私がルーツを持つ島だ(母が出身)。その滞在中に仲良くなった方から「話が合いそう」と紹介してもらった方が、地域おこし協力隊として活動している金城さん。海外が長かったというので聞けば、オーストラリアに10年、タイに6年、マレーシアに3年、というキャリアに仰天。なぜそんな人が、牧歌的ともいえるこの島に?海外に出る前の過去とこれからの計画は、想像していた以上に密接につながっていました。

おきのえらぶ島で洞窟ツアーなどの地域おこし

水嶋: いまは起業準備中ということですが、3月末まで地域おこし協力隊をやられていたという話なのでそちらについて聞かせてもらっていいですか?

金城: はい。奄美群島の沖永良部島(おきのえらぶじま)の、和泊町で3年間任務についていました。ミッションは町の活性化。洞窟探検ツアーを通じ、素晴らしい資源の再認識と環境問題の啓発を、大学の先生方とテーマパークの演出家と取り組みました。島では昔から生活ゴミを洞窟に捨てており(※)、最近は自然に還らないプラスティックに素材が変わったものの生活習慣は変わらず何十年も続けられてきた結果、人力では撤去できないゴミが堆積されてしまったんです。

※島には大小200~300の洞窟が点在している

洞窟周辺に棄てられたゴミ
ゴミが捨てられている洞窟周辺の様子

水嶋: 環境問題意識がなかった時代では、都合のいいゴミ箱ですもんね。

金城: そうですね、捨ててしまえば周りからは見えないので。そこでディズニーランドでやっているようなジャングルクルーズ風に、ストーリー仕立てでゴミ問題について説明しながら洞窟を歩き、地域の資源としての意識を持ってもらうというツアーを開催しました。定員は40人だったんですが、最終的には100人くらいの地域住人と島の子どもたちが集まりましたね。

水嶋: 100人ですか、それは集まりましたね!

洞窟周辺を調査する金城さん
洞窟周辺を調査中の金城さん

金城: 島はイベント好きな人が多いんです。また、洞窟があるのは知ってるけど行ったことがない人が多かったので、興味があったのかもしれません。

水嶋: なるほど。ほかにはどんなことを?

金城: 空き家改修プロジェクトの支援や、島の暮らしをイメージしてもらうための移住体験ツアーを両町(和泊町と隣の知名町)や観光協会と取り組んだり、サップ体験、集落に伝わる黒糖づくりの体験など観光プログラムの開発、また最近は農業と観光の連携を強めた農泊事業などに取組んでいます。

水嶋: 活動的!で、任期を終えられて、いまは島で起業準備中と。

金城: そうです。島は農業に関わる方が多いのですが、人手と後継者の不足は大きな課題。そこで首都圏から人を呼び込み、通年に渡って必要な時期に必要な各事業者へ派遣できる仕組みづくりを考えています。

水嶋: 事業者さんによって時期がまばらなんですね。

金城: はい。農業の繁忙期はおもに11~3月で、観光シーズンは7~10月、それ以外は飲食店と、年間を通じて安定した収入を確保するマルチワークのような働き方をイメージしてもらえればと思います。それこそ、テレワークなどを続けながら副業として島の仕事をすることも可能だと思います。

沖永良部島の青い海をバックに、サップを持つ金城さんと二人の参加者。
美しい海という地域資源を活かしたサップ体験

水嶋: いま一層、リスク分散できるマルチワークは需要高まりそうですね。

金城: だと思います。新型コロナウイルスの影響で職を失う人もいる中、島人の暮らし方は最強だなと思いました。野菜や果物を栽培し、魚を釣り、潮が引けば貝やアオサ、タコなどを捕まえ、獲れ過ぎたら近所の配るという生活が根底にあるので、コロナだろうが、まず食に困ることはありません。

水嶋: ユートピアだな…っと、金城さんの海外経験を聞かせてください!

旅行会社のマネージャーとして6拠点を20年弱

水嶋: 金城さんと会ってお話したとき、海外歴が20年近くとかなり長くて驚きました。そのあたり、詳しく聞いていいですか?

金城: いいですよ。オーストラリアに10年、タイに6年、マレーシアに3年、旅行会社で、ツアーガイド、ツアーコーディネーター、所長、支店長と経験しました。時系列でいうと、ゴールドコーストに4年、メルボルンに3年、プーケットに3年、バンコクに3年、ケアンズに3年、クアラルンプールに3年です。

水嶋: スケールの大きな転勤族…。

金城: 社会人になってからはほとんど海外ですね。

ケアンズのスタッフミーティングにて金城さんとスタッフの方々
旅行会社時代の金城さん(左端)、ケアンズのスタッフミーティングにて。

水嶋: 海外へ行かれたきっかけは何だったんですか?

金城日本社会に適合できなかったんですよ。

水嶋: 詳しく…聞きたい…!

金城: 最初はサラリーマンとして日本で働いていたんですがクビになって。

水嶋: 理由、聞いてもいいですか?

金城: 新人なのに出社しなかったり、夕方くらいに行ってもすぐ帰ったり。簡単に言えば、社会を舐めてたんです。

水嶋: 思ったよりすごかった。

金城: それから当時付き合っていた彼女と遊んでいるときに事故を起こして、しばらくしてから彼女がオーストラリアへ行くことになったんですが、自分もダイビングのライセンスをとって半年くらいで日本に帰ろうと思い、便乗して付いていったんですね。でも現地に行ってみたら想像以上におもしろくて、仕事を見つけてそのまま暮らすことになったんです。

水嶋: どういうところがおもしろかったんですか?

金城生活環境ですね。ゴールドコーストだったんですがコンドミニアム…日本でいうタワマンみたいなところに住んで、プールにジムにテニスコートもあるし、日本人からしたら夢のような生活じゃないですか。それでいて年300日間が晴れで、地元の人は開放的だし日本みたいな閉塞感がなかった。

水嶋: オーストラリアは行ったことないけど、自分が知っているシーリゾートでも確かに想像がつきます。仕事はダイビングのインストラクターとか?

金城: いや、実は日本を出る前にぎっくり腰になっちゃって。なので、ライセンスをとるならケアンズだけど、できないからゴールドコーストへ行ったんです。見つけた仕事はインストラクターでなく旅行会社のガイドでした。

水嶋: なるほど、それからマネージャー職であちこちへという流れですね。

エコヴィレッジへの興味、まずは日本の地方へ。

水嶋: じゃあ、そのあとで沖永良部島に?

金城: いや、実は旅行会社のあとで別の仕事を挟んでるんですよ。

水嶋: そうだったんですか!どのような?

金城: マレーシアにいたときの取引先の方から「海上自衛隊の派遣支援を手伝ってもらえないか?」という話があって。彼らの、海外各地の派遣先や寄港地での、ホテルや車両手配、食糧や飲料品の搭載などの支援業務ですね。

水嶋: めっちゃくちゃおもしろそうですね!

金城: うん。帰国後もうサラリーマンはやりたくないって思ってて、会社に行かなくてもいいという条件を飲んでもらったし、いろんな場所に行けるというワクワク感が勝っちゃって。そこで3年働いて、ヨーロッパ各地や、スリランカ、タヒチ、ニュージーランド、オマーンとか。ぜんぶで70カ国くらい回った。

水嶋: 旅行会社にいたときの10倍以上回ってるじゃないですか…!

海上自衛隊関連の仕事にて、スーツ姿で船を望む金城さん。
海上自衛隊を支援するお仕事をされていた頃の金城さん

水嶋: でも、それから離島で地域おこし協力隊ってなんでまた。

金城: そもそも日本に戻った理由が、エコヴィレッジをつくりたくて。食やエネルギーを100%自給自足できるコミュニティを、タイの貧困地域でできないかと思ってたんです。

水嶋: そう思った理由は?

金城日本の社会が好きじゃなかったんだよね。なのでそこに対する反発心があって、もっとおもしろい世界が実現できないかな、お金を稼ぐために働くという構造そのものを変えられないかなと思って。

水嶋: 最初の「適合できなかった」という背景と見事につながりますね。

金城: ただ、タイの前に、日本の方が少子高齢化で大変だと知って、まずはこの現状を知っておくべきなんじゃないかと思った。

水嶋: そうか、それで地域おこし協力隊。でも、今後の話を聞く限り、島でエコヴィレッジをつくるって訳じゃないですよね?

金城: そうだね。これからの事業で島に移住者を呼び込もうとしているけどその中で外国人もと思ってる。そこで彼らが農業を学んで母国に戻っていったら、その先を拠点に展開してもおもしろいんじゃないかなと思ってるよ。

水嶋: 壮大!いいですね。島がハブとなって出会った人が将来のエコヴィレッジのパートナーになっていく訳ですか。海外各地でたくさんの経験を積んできた金城さんには、景色がハッキリと見えてるんだろうなぁと思います。

沖永良部島の空港にて、鹿児島~沖永良部線就航45周年を祝う様子。

海外経験が仕事や価値観にどう影響を与えているか

水嶋: ありますか?海外経験がいまの仕事や価値観にどう活きているか。

金城: やっぱり、多様性を認められるようになったことだね。日本ではなんとなく当たり前にあったことが海外では通用しないし、考え方もさまざま。かつては日本が経済を回している時代があり、それが正しいと言われてきたけど、そのやり方がいまでもすべて正しい訳でないということが分かった。

水嶋: そうですよね。いま現場で活躍している世代って、私もふくめ、当時の教育現場やメディアでジャパンブランドを刷り込まれたように思います。事実ではあるのでしょうがないことなんですけど、たった半世紀の話です。

金城: いまとなってはこの状況(コロナショック)だし、経済がすべてではないけど、日本人も変わっていかないといけないと思うな。日本はいま自信を失いつつあるけど、幸いアジアの中ではまだ尊敬される部分もあって、リーダーシップをとってやっていけるかが大事なんじゃないかなと思います。

水嶋: 仕事における部分ではどうですか?旅行業界が長かったという点では、洞窟ツアーなんてまさにその経験があったからできたことですよね。

金城: そうね。旅行会社と言いつつイベント会社的なところが多くて、3000人規模のツアー、300人規模の障碍者の方向けのツアー、ほかにも首脳会議の交流事業をやったりしてた。それを進める上でいろんな問題が起こるのでどんなアプローチをすれば解決できるのかという訓練を積まされた。自分でダメだと思ったらどうしようもないし、その点では遂行力がついたと思う。

水嶋: 遂行力、ものすごくよく分かります。何が起こるか分からない、つまりトラブルが当たり前の世界ですもんね。旅行業界はとくにそうだろうな。

帰国就職に悩む友人がいればなんと言う?

“道に迷った時は、自分のエネルギーが上がる選択をすること。常に最高の自分の状態をキープしておけば、恐れるものは何も無い。海外を経験して、日本に戻ってくると、閉塞感を感じたりするかもしれないけど、今後、日本の社会に必要なのは、本当の意味でのグローバルな感覚を持った人材だと思う。そして、日本の社会が多様性を認め、ユーモアと柔軟性を取り入れられれば、素晴らしい国になるだろう。今こそ海外を経験した人達とネットワークで繋がり、遊びや仕事も理想のライフスタイルを実現しよう!

The most important thing is to enjoy your life, to be happy. It’s all that matters. Best wishes to you!!(金城真幸/1994~2013年・オーストラリア・タイ・マレーシア在住)”


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